ポンポコヤ

 「ちょっとポンポコヤまで行ってみます」
 散歩に出かける時、じいちゃんの背中から必ず聞こえる言葉だ。私は“ポンポコヤって...何?”と思いつつも「はい、いってらっしゃい」とだけ答えて見送っている。その意味はよく判らないが、大体の行く先は判っているし、そんなに心配していなかった。
 ところが、何だか急に不安になってきた。これまでポンポコヤ=ポンコツ屋だと、何となく思っていた。それは、以前、じいちゃんが中古車店を営んでいたからで、自動車解体屋が、つい目に付いてしまうのだろうと.....。しかし、よく考えてみたら、近隣に解体屋などない。
 もしかして...ポンコツ屋とはリサイクルショップなんじゃないか?
 背筋がヒヤリとした。。((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
 ヤバイ!。((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
 リサイクルショップは大通りを挟んだ向こう側にしかないはずだ。じいちゃんは知らぬ間に行動範囲を広げて、横断歩道を渡っているのか!!!
 危険だ。((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
 危険すぎる。((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

 これは、やんわりと止めなければ。
 しかし、その前に一度、訊ねてみよう。何事もないように。じいちゃんのプライドを傷つけないように、さりげなく、さりげなく。
 「ポンポコヤ、どうですか?」
 どう?ってこんな質問でいいのか。(自問自答)
 「ん?もう、できとるごたるよ」
 出来た?何が?さっぱりわからん?
 「あの〜ポンコツ屋ですよね?」
 はっきりと確信をついたつもりだった。
 「うんにゃ(←これ否定)、ポンコツ屋じゃない、ポンポコヤ」
 はっきりと否定された。しかも笑われた(_ _|||)
 やはりポンコツ屋ではなく、ポンポコヤのようだ。ただ詳しくルートを聞いてみると大通りは渡ってはいないようなので、このままでもいいのだが、もう訊こう。気になる。。
 「あの〜今更ですが、ポンポコヤって何ですか?」
 「はは〜ん、出来たばっかだけん、花田くんは知らんとやろね〜。すぐ近くに出来とるとバッテンね〜。もうすぐ開くど」
 「開くんですか?居酒屋か何かですか?」
 「うんにゃ(←これ否定)、居酒屋じゃなかろ」
 じいちゃん笑ってる。
 しかもバカバカしいとばかりに、そのまま話は終わってしまったΣ( ̄ロ ̄lll)
 どうやら居酒屋ではないが、開店間近のお店であるようだ。つまりオープンに先行して「ぽんぽこ屋」という看板か、或いは広告があるのだろう。おそらくタヌキの絵が描いてあるに違いない。何かどうでもよくなって、そのまま自己決着していたのだが、ヨメが在宅していたある日。
 「ちょっとポンポコヤまで行ってみます」
 いつものように出かけ際にじいちゃんが言った。
 「ポンポコヤって何ね?」
 ヨメが反応した。
 「ポンポコヤはポンポコヤだろ」
 「だから、そのポンポコヤって何?」
 「何って言われてもね・・・」
 じいちゃんは困ったよう口篭もって笑った。
 「もう一回ゆっくり言って、何て言ってるのか、判らん?」
 さすが、娘だ。オレには決して出来ない失礼なことさせる。
 「だ、か、ら〜、ぽ、ん、ぷ、ご、や」
 おぉぉぉぉーーーーポンプ小屋か!
 なるほど、確かにすぐ近くに水道局の施設が出来たばかりだ。しかし小屋というには程遠いかなり立派な建物なのだが、まあ、これで納得(*゚▽゚*)




 〜その後〜
 《じいちゃんと息子の会話》
 
 「じいちゃん、今日はポンポコ山に行かんと?」
 「はぁ〜、ポンポコ山って何ね?、ポンポコヤだろ」
 「えぇ〜ポンポコ山やろ?」
 「ちがう、ちがう。ポンポコヤ!」
 
 ん〜知っていても、やっぱりポンポコヤとしか聞こえない(・ェ・。)